RAW(生データ)ならそのままの情報を持ちますが情報量が多く処理が大変です。機材も処理も時間とお金がかかります。S-logは限られたデータの中に、幅広いダイナミックレンジを収めるためにガンマカーブをうまく調整(人間の視覚のように対数・Log的に階調を調整)した形式です。時間もお金も抑えつつ、幅広いラチチュードを持つ最新のセンサーの性能をうまいこと引き出してくれます。
Sony α7系のSlogはすべて8bitです。8bitは2の8乗ですので256段階(0~255)の階調です。Sony FS7等であれば、10bitです。10bitなら1024段階もあります。8bitのSlogは少ない階調の中に、幅広いダイナミックレンジを収めようとしています。そのために8bitのSlogはダメだね・・・という人もいます。たぶんダメなんでしょう。
S-log3は、S-log2よりも低輝度側の階調を重視したガンマカープを採用しています。シャドーからミッドトーンの階調に優れています。Sonyの説明ではCineonライクでフィルムに近いガンマカーブとされています。フィルム世代ではないので、Cineonライク(フィルムっぽいものと認識)がどのようなものかピンときません。同様にS-log2は中輝度から高輝度側となるミッドトーンからハイライトの階調に適しているとされています。
S-log3のほうが広いダイナミックレンジに対応しているように見えますから、8bit(階調が少ないので)ではS-log3を使わないほうが良いという話をよく聞きます。S-log2より顕著にパンディング等でも発生するのでしょうか。8bitではS-log3は、本当に使い物にならないのでしょうか。実際に検証してみます。
Sony α7R IIIでSlog2とSlog3を比べてみました。S-log2は暗部にノイズが出やすいので、明るめに撮影したほうが良いとされています。S-log3も同様です。露出+2を目安に撮影します。
S-log3のLUTはこちらからダウンロードできます。
http://www.pro.sony.eu/pro/lang/en/eu/support/software/SW_260216_PSG/1
S-log3についてメーカー説明
S-Log3のガンマカーブ。撮影後のグレーディングを前提とした、よりフィルムに似た特性のガンマカーブ。S-Log2よりも低輝度側の階調を重視している。S-Log3の特性としては1300%以上のレベルも定義されていますが、ピクチャープロファイルでは、性能とのバランスからダイナミックレンジ1300%となるように設定されます。この場合、ビデオ出力レベルは最大94%になります。
http://helpguide.sony.net/di/pp/v1/ja/contents/TP0000847999.html
14ストップの広ダイナミックレンジのS-Log3。シャドーからミッドトーン(18%グレー)にかけての階調特性を重視したS-Log3を搭載。S-Log3設定時は、14ストップの広い再現域を確保。
http://www.sony.jp/ichigan/products/ILCE-7RM3/feature_4.html#L2_310
What is S-Log (S-Log2/S-Log3)?
S-Log is a gamma curve with a wide dynamic range optimized under the assumption that grading will be performed in the post-production process. S-Log3 allows for better reproduction of gradation characteristics in shadows and the mid-tone range than S-Log2. It has characteristics closer to those of scanned film.S-Log3 is recommended in general. If S-Log3 does not offer sufficient gradation in the mid- to high-luminance range, try S-Log2.
https://sony-paa-pa-en-web–paa.custhelp.com/app/answers/detail/a_id/164018
S-log2とS-log3の見た目の違い
S-log3はS-log2より薄く(眠たく)明るい映像に見えます。低輝度の階調に優れているだけあり暗部のディテールがしっかりと見えます。S-log3はS-log2より、さらに暗い部分までしっかりと映っています。
S-log3そのままの映像
S-log2そのままの映像
メーカの動画も参考にどうぞ。
8bitのS-log3とS-log2を比較チェック
全体の輝度は同じに見えるように細かく調整しています。S-log3もS-log2ほとんど同じに思えます。つまりS-log3だから劣っている部分をまったく感じません。肌色にもっとパンディングが出てボソボソになると思っていたのですが予想外にSlog2となったく同じでした。Slog2の映像と同じように扱える印象です。
同じように扱えるならより暗部までしっかり映るS-log3で撮影しておけば、暗い部分も印象が残せると考えられます。8bitだからS-log3は全く使えない、ということは全く無いように見えます。
各シーンの切り出しです。どちらがどちらのS-logか判断がつきますか?
正解は、それぞれ1枚目がS-log2、2枚目がS-log3です。まったく違いがわかりません。
中輝度から高輝度にて、確かにSlog3は空にパンディングが出やすいように見えます。でも気のせいかもしれません。よくわからない違いです。少なくても中輝度から高輝度側を多く含まないシーンならS-log3が使えるでしょう。以上。私の腐った目には、ほとんど違いを発見できませんでした。
8bitでもSlog3を使っても良い(ほとんど変わらない)というのが私の結論です。違いの分からない男ならSlog3!そしてCineonライクな映像を撮れるっていえば通っぽいです。Sony α7R3だからS-log3の性能が良くなっている可能性もあるかもしれません。